みんなの住まい

つかず離れずの距離がちょうどいい。“近居”が支持される理由とは?

これからの子育て世帯が住まい方を語るときに、今、話題となっているキーワードの一つが“近居”です。その暮らしには、どのようなメリットがあるのでしょうか。近居を希望しているママ、実践したママにも話を聞き、三世代が幸せに暮らせるヒントを探ります。

親世帯との距離感はどれくらいがベスト?

国土交通省は、近居を「住居は異なるものの、日常的な往来ができる範囲以内に居住することを指すもの」※1として、近居の距離を「車・電車で1時間以内」の範囲としていますが、具体的な距離や時間の決まりはありません。一般的に親世帯と子世帯が“必要な時に気軽に行き来できる範囲で暮らす生活スタイル”を近居と呼びます。

結婚して世帯を持つと考えなければいけないのが「親と同居か別居か」など、親世帯との関係性ですが、同居は「プライバシーが保ちにくく、家計や家事の負担が大きくなる」と抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。その点、近居という住まい方なら、ほど良い距離でお互いの生活を尊重しながら暮らせます。
平成26年度の国土交通省による調査※2の結果、子育て世代の30?40歳代の女性の46%が、理想の住まい方として近居を考えていることが分かりました。

※1国土交通省 「近居」について-既婚者とその親との住まい方-より

※2国土交通省 平成26年度 若年・子育て世帯、高齢者世帯の現状と論点より

育児に仕事に忙しいママたちが、近居を選ぶ理由とは?

若い子育て世代に近居が支持されているのは、共働き家庭の増加が理由の一つと考えられます。内閣府の調査※によれば、近年共働き世帯数は増加し、専業主婦の世帯は減少傾向にあります。働くママが育児と仕事を両立するための環境が求められていますが、待機児童の問題や小学校の学童保育の預かり時間の短さなど、共働き家庭に起こる問題は様々。そこで親世帯が近くに住んでいれば、残業時の保育所や学童保育のお迎えや、子どもが病気になった時のサポートが期待できますし、何より精神的な支えになりますよね。
また、親以外の大人と接する機会は子どもの情操面の成長にも繋がります。ママの子育ての負担が軽くなり、子どもの教育や情緒の成長にも良い効果が得られるのであれば、近居が支持されていることにも納得できますね。

※内閣府 男女共同参画白書 平成27年度版より

孫は来て良し、帰って良し。親世代にとっても近居が理想的?

近居という居住形態は、親世代にも喜ばれるスタイル。「同居が一番喜ばれるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、生活時間や価値観が異なる子世帯との同居はストレスに繋がることも。毎日一緒は疲れてしまうという親世帯も、無理しない範囲で孫育てに関われる近居の方が気楽です。特に団塊世代の男性は仕事が忙しく今のパパのように子育てに関わることが少なかったので、その分、孫を可愛がる方が多いのだとか。
子世帯が近くに住んでいると、何かあったときにすぐ駆け付けてくれるという安心感もあります。

親しき中にも礼儀あり!お互いが気持ち良く暮らすためには、〇〇〇が必要

このように「普段からちょっとした頼みごとができる」「緊急時に子どもの面倒を見てもらえる」、「精神的な支えがある」などのメリットが子世帯の育児と家事の負担を減らし、「会いたい時に子や孫に会える」、「何かあればすぐに来てもらえる」距離が親世帯の生きがいや安心感に繋がるため、付かず離れずの暮らし方は双方から支持されています。
しかし、家族といえども、気持ちよく付き合うためには気遣いが必要です。親にサポートをお願いしたときは、感謝を言葉に出して伝えたり、孫が可愛いからといって親が体力的に無理をしていないか気を配りましょう。近くに住んでいる分、家族の関係が悪化してしまうと修復にも労力が必要となるので、お互いが毎日の気遣いを怠らずに良い関係を保ちたいですね。また、近居を考えるときには“近居できない親との距離感”にも気を付けたいもの。片方の親世帯だけと近い関係になると、ぎくしゃくすることも……。普段からこまめに電話をしたり、休日を利用して遊びに行ったりするなどの配慮があると良いかもしれません。

近居を選んだママたちの本音

親子の近居にはいくつかのメリットが考えられますが、本当に便利なのか気になりますよね。実際に近居をしている、希望しているという育児中のママ2人に、生の声を聴いてみました。

<出産後すぐに職場復帰したママAさん>

父方の親世帯と車で10?15分程度の場所に新築マンションを購入したAさん。「私が正社員で働き続けるために、日常的に親に子どもの世話をしてもらう必要があった」と振り返ります。同居でなく近居を選んだのは“プライバシーを保ちたい”という理由ですが、実際には自宅の鍵を親に渡して家の中まで入ってもらうことが多いのだとか。「仕事が忙しい時など、親の自宅で食事を作って持ってきてもらい、とても助かる」とのこと。作った料理が冷めない距離に親のサポートがあれば、育児の負担が減り経済的にも助かります。また、ママと子どもがけんかした時、おじいちゃん・おばあちゃんが孫の逃げ場となって話を聞いてくれることもあるそう。やはり世代間のコミュニケーションが日常的に取れることも大きなメリットですね。

<現在育休中で住まい探しをしているママBさん>

“母方の親世帯の近く”を住まいの第一条件としてあげているというBさん。「利便性を優先的に考え、保育施設・自宅・そして親世帯のトライアングルの距離が近い住まいを現在探している」と言います。自分の親なので子どもの世話を頼みやすく安心して任せることができ、また、緊急時の対応をお願いすることを考えれば、親世帯の住まいから保育施設が近いことは親の負担減少にもなります。Bさんは「自分たち(子世帯)の要望ばかりおしつけず、親の生活を重視してサポートをお願いしたい」と考えているそうです。

気になる自治体の助成制度。行政も近居を応援!

子育てのヘルプが欲しい子世帯と、孫と過ごしたい親世帯、両方のニーズから生まれた近居という居住形態。政府が打ち出した「一億総活躍社会」※では、三世代同居と近居の促進も盛り込まれています。少子化対策として東京23区でも近居を支援する自治体が増えてきました。

※内閣府 少子化社会対策大綱?結婚、妊娠、子供、子育てに温かい社会の実現をめざして?より

スープの冷めない距離がこれからの暮らし方

親の近くに住んで色々と助けてもらいたい子世帯と、孫の育児に適度に関わりたい親世帯がお互い気を遣わずちょうど良い距離感で支え合いながら暮らせたら……。そんな願いを叶える近居は今後さらに注目を集めていくことになりそうですね。

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